2019年12月9日、新プロジェクト『GOOD LOCAL COMMUNITY(GLC)』に伴うトークイベントが開催されました。テーマは【福知山ワンダーマーケットの「これまで」を振り返り「これから」を考える】。前半のレポートに引き続き、イベントの模様をお届けします。
商店街のシャッターを開ける『アーキテンポ』
福知山ワンダーマーケットの共同代表(庄田 健助さん/美作 歩さん)が登壇した、『GOOD LOCAL COMMUNITY』のトークイベント。前半では、福知山ワンダーマーケットが立ち上がった背景や運営の裏側をご紹介しました。
そして、後半では、今回のイベント会場である『アーキテンポ』と新しいプロジェクト『GOOD LOCAL COMMUNITY』についてお届けします。
2019年4月にオープンしたアーキテンポ。もともと「愛友堂」という紳士服だった空き店舗を、厨房付きレンタルスペースに改装して出来上がりました。取り組みの背景には、福知山ワンダーマーケットを始めた目的との関わりがあります。
前半でもご紹介しましたが、新町商店街で定期マーケットを始めた背景には、「空き店舗を活用してくれる人を集めたい」という想いあります。
しかし、スタートから2年目を迎えても、空き店舗が埋まる気配はありません。運営メンバーのモチベーションも低下傾向。そこで、「まずは自分たちで空き店舗をシャッターを開けよう」と取り組んだのがアーキテンポの開設でした。
庄田「福知山ワンダーマーケットの出店者さんを対象に、自分のお店を開業するまでのステップアップの場をつくりたいと考えました。新しいファンづくりや店舗運営の経験を積む場所になりますし、近隣に暮らす方にとっても新しい憩いの場所になると思ったんです」
店舗設計は、京都工芸繊維大学で建築家を目指している学生に依頼。限られた資金のなかで、メンバーからのいろんな要求を反映させる。相反する難しい要件と向き合いながら、新町商店街の新しいアイコンとなるような場所を設計してもらいました。
その他、コストを抑えるために、DIYを実施したり、冷蔵庫以外の厨房機器を譲り受けたり。全員が手を動かし合いながら、少しずつ形にしていきます。
また、クラウドファンディングにも挑戦し、目標金額の100万円を見事に達成(最終的な支援総額は130万円)。「たくさんの人たちに応援してもらい、かっこいい空間をつくることができました」と庄田さんは振り返ります。
現在、アーキテンポの利用者はさまざまです。農家が営む朝食堂、製麺所が手がけるラーメン屋、美容師が運営するオシャレBARなど。毎週固定で出店する方だけでなく、1日単位でスペースを借りる方も増えています。
庄田「アーキテンポの出店者さんから、お客さんがみんないい人で嬉しいという感想をもらっています。これは、福知山ワンダーマーケットでもよく耳にすること。周辺に食事ができるお店が少ないこともありますが、近所に暮らす人たちが集まる場所になっているみたいですね」
美作「結構、年配の方が来られていますもんね」
庄田「もうひとつ、アーキテンポを開設して実感しているのは、多方面から注目されるようになったこと。例えば、最近では『LIFULL HOME’S PRESS』というメディアから取材を受けました」
マーケットを開いている商店街は多いですが、レンタルスペースをつくったり、クラウドファンディングを達成したりする事例は少ないです。いろんな場面で、いろんなことに挑戦する姿勢が大事だなと感じています。
私たちが目指す「まち」の未来
福知山ワンダーマーケット、アーキテンポに続き、最後に語られたのが、庄田さん、美作さんたちが目指している「まち」の未来についてです。
庄田「僕たちがイメージしているのは、『京都府の左京区』と『大阪府の中崎町』です。共通しているのは、『小商いが集積しているまち』だということ。こだわりを持った個人店が点在しており、独自の世界観に共感した人たちが集まっています」
左京区と中崎町のような、個人店が集まる場所にしたい。その背景には、「地域経済の発展に必要なお金の循環がある」と庄田さんは説明します。例えば、福知山市内で生産した物を市内外で販売する。福知山市内に入ってくるお金を増やし、市内でお金を巡らせる。この構造をつくるためにも、地元でビジネスやモノづくりにチャレンジする人を増やす必要があります。
また、「地元でチャレンジする人を応援するコミュニティも必要」と庄田さん。例えば、アーキテンポを開設するため、クラウドファンディングに挑戦しました。見事に目標金額を達成。蓋を開けてみると、出資者の中にはマーケットの出店者さんがたくさんいました。
庄田「福知山ワンダーマーケットをコミュニティと捉えたとき、僕たちのチャレンジに賛同してくれる人たちがたくさんいることが分かりました。そして、コミュニティを育てることが、お金の循環を生み、経済を発展させることにも繋がると実感したんです」
左京区と中崎町に比べれば、福知山は市場規模の小さいまちです。地方都市で同じような「まちの未来」を実現するのは難しいかもしれません。でも、そこでチャレンジしていくのが、新しいプロジェクト『GOOD LOCAL COMMUNITY』です。
第3章『GOOD LOCAL COMMUNITY』
GLCで取り組むのは大きく分けて2つ。「オフラインのコミュニティづくり」と「オンラインのメディア運営」です。
まず、価値観に共感してくれる人や取り組みに賛同してくれる人が集まる場(コミュニティ)をつくります。今回のようなトークイベントもそのひとつ。そこで、これから取り組んでいくのが「地元企業とクリエイターのマッチング」です。
庄田「今年、アメリカのポートランドを訪れたのですが、そこでオリジナルの石鹸をつくるクリエイターに出会ったんですね。お洒落でかっこよくて、品質も高いなと感じたんですが、正直、どのようにマネタイズしているのか分からなかった。尋ねてみたら、地元のホテルからたくさん発注してもらっているらしいんですよ」
美作「ホテルのアメニティとして?」
庄田「そう。地元のクリエイターがつくる商品を積極的に取り入れて、そのポリシーに共感したお客さんがホテルやお店に集まる。地元でチャレンジする人たちを応援する文化が、ポートランドには根付いていたんです」
庄田「今後、福知山ワンダーマーケットと地元企業のマッチングイベントを開催する予定。そして、オンラインのメディアを通じて、イベントの模様はもちろん、出店者さんの活動やそれを応援する企業の姿勢を発信します」
美作「出店者さんの販路開拓のきっかけにもなるわけですね」
庄田「GOOD LOCAL COMMUNITYで取り組むことは、コミュニティ運営や情報発信だけにとどまりません。いずれはクリエイターと共同開発したギフトづくりをはじめ、いろんなことにチャレンジしていきます」
地元企業がクリエイターの活動を応援する。個人店を開業・運営しやすい環境や文化が根づけば、スモールビジネスにチャレンジする人や空き店舗を活用したいと手を挙げる人が増えるはず。『GOOD LOCAL COMMUNITY』という名のムーブメントを起こしていきます。
最後に、「福知山ワンダーマーケットは今日から新しい取り組みにチャレンジしていきます。でも、僕たちだけで成し遂げることはできません。地域を発展させるムーブメントを、みんなで起こしていきましょう!」と庄田さんからメッセージが送られ、イベントの幕が閉じられました。
トークセッションのあとは、参加者同士の懇談会。カウンターには、アーキテンポ出店者であり、農家さんでもある『ミヤサイ』さんの野菜たっぷりな料理が並びます。食事をいただきながら、世代や職種を越えた交流が行われました。
以下、アンケートの内容を一部抜粋して掲載します。
・自分で会社を作ることの難しさや大切なことなどが学べました。私も将来は自分のお店を持ちたいと思っているので参加して良かったと思いました。(10代)
・とってもワクワクしています!アーキテンポに人が集まる雰囲気がステキだなぁと勉強になりました!(20代)
・行政の補助なしで運営されていることに驚きました。情熱と行動を持った同志の方が増えることを願っております。(40代)
第1章を福知山ワンダーマーケット、第2章をアーキテンポと捉えるなら、GOOD LOCAL COMMUNITYは第3章にあたります。福知山市・新町商店街から始まる、新しい物語にご期待ください。