レポート

福知山唯一の酒蔵・東和酒造を訪ねて『上六人部 日本酒づくり』第3回レポート

2020/12/25

上六人部の純米吟醸『さつき和花』

奥丹波の小さな集落・上六人部(かみむとべ)の人たちと、全国から集まった12名の有志が協力し、新しい日本酒『さつき和花(のどか)』が生まれました。

福知山市の花である「さつき」の花言葉と同様に、まさに様々な人たちの「協力を得られる」ことで生まれたお酒。果物を思わせる爽やかな香りとすっきりとした味わいに仕上がっています。

さつき和花は、福知山市の酒蔵東和酒造及び酒屋『辰巳屋商店本店』の店頭、または『オンラインショップ』にてご購入いただけます。“数量限定”の販売となりますので、お早めにお買い求めください。

◆オンラインショップはこちら

第3回目「日本酒造り体験」レポート

京都府福知山市の南東に位置する上六人部地区。この地域を舞台に、上六人部活性化協議会が主催の地域イベント『日本酒造り体験』が開催されました。『さつき和花』は、全国から集まったイベント参加者と、地元の人たちとの協力によって生まれた日本酒。その軌跡をレポート記事としてお届けします。

かつて大阪と京都を結ぶ交通の大動脈だった古道・京街道。色鮮やかに彩られた山々を見渡しながら歩みを進めると、江戸中期に創業した酒蔵『東和酒造』が見えてきます。

第2回目となる前回では、自分たちでつくるオリジナル日本酒の名前が決定。その名も【さつき和花(のどか)】です。そして、第3回目となる今回はイベントの大目玉! 酒蔵を訪ねて実際に日本酒づくりを体験しました。

福知山唯一の酒蔵で体験する日本酒づくり

今回、酒造体験の場を提供してくれたのは東和酒造さん。創業は享保2年(1717年)。大阪と京都を結ぶ京街道に面していたことから、当時は旅人向けの酒屋として営業しながら、自家醸造も行っていたのだそう。江戸時代に建てられたとされる酒蔵は趣があります。

福知山周辺はもともとはお酒造りが盛んだった地域。多いときで15もの酒蔵があったのだとか。しかし、時代の流れを受けて次々と減っていき、東和酒造さんも存続の危機に直面します。その後、10代目の娘さんが女性杜氏になることを決意。33年間の休蔵を経て、2011年から酒造りを再開します。

現在、東和酒造さんは福知山唯一の酒蔵。10代目の今川 新六さん、11代目となる女性杜氏・今川 純さん、長野県の蔵が実家のご主人・飯田 玄さんが加わり、少数精鋭で昔ながらの酒造りに取り組んでいます。

福知山音頭にちなんだ代表銘柄『福知三萬二千石』、「六人部の人が歓ぶような日本酒を造ろう」がコンセプトの『六歓』などがラインナップ。いずれも地元の食材を使用。酒瓶ラベルの美しさが目を惹きます(オンラインストアはこちら)。

参加者11名が東和酒造さんの蔵前に集合。まずは上六人部活性化協議会の髙野 隆会長から開催の挨拶が贈られます。その後、女性杜氏の純さんとご主人の玄さんから、体験内容や参加にあたっての注意事項などが伝えられました。

服装と準備を整えて、いざ、酒蔵のなかへ!

待ち受けていたのは大きなせいろ。蒸されているのは、第1回目のときに参加者みんなで稲刈りしたコシヒカリです。水蒸気が天井いっぱいにたちこめており、マスク越しでもお米の甘い香りを感じました。

ここで簡単に日本酒づくりの全体像をご紹介しましょう。日本酒は「精米」「洗米・浸漬」「蒸米・放冷」「製麹」「酒母造り」「醪造り」「搾り」「瓶詰め・貯蔵」の工程でつくられています。

出典:SAKETIMES ※配布イラストを一部改変

ここで取り上げたいのは「蒸し」「醪造り」の工程。

精米・洗米・浸漬したお米は、大きなせいろで蒸していきます。蒸米は温度を下げる「放冷」を行い、「麹米」「酒母用米」「掛米」の3つの用途で使用されます。ちなみに「麹米」は製麹用に使われるお米に対して、「掛米」は醪(もろみ)づくりのために使われるお米のことです。

また、「醪造り」は日本酒になる前段階「醪」を造る工程。蒸米・麹米・仕込み水を3回に分けて投入し、ゆっくりと発酵させる「三段仕込み」が一般的です。

三段仕込みは4日間の工程で行われます。1日目を「初添(はつぞえ)」、2日目を「踊り」、3日目を「仲添(なかぞえ)」、4日目を「留添(とめぞえ)」と呼びます。段階を踏んで原料の投入量を増やし、タンク内の環境を整えながら発酵させます。

今回、参加者の皆さんが体験したのは「醪造り」。三段仕込みの「留添」の工程です。大きなせいろで「蒸米」をこしらえて、お米をほぐしながら温度を冷ます「放冷」を行って「掛米」をつくり、醪造りのタンクに投入するまでを体験します。

蒸しあがりの時間となり、純さんがお米の状態を確認。10代目の新六さんがスコップで豪快に取り出し、参加者のもとに配られます。

ここからが参加者の皆さんの出番!

温度を一定にするため、布に広げられた蒸米を手でばらしていきます。これが想像以上に難しく、お米が上手くほぐれてくれません。中腰なので姿勢を保つのも辛い(笑)。いつもはこの作業をたった数人で行っているのだそうです。

ばらし終わった蒸米は醪造り用のタンクに投入。すでに入っている原料と合わせるため、「櫂 (かい)」と呼ばれる攪拌用の棒でタンク内をかき回します。でも、実際にやってみると、重くてなかなか動かせない…! 一方、純さんは軽々しく、文字通り撹拌機のようにかき回していました。

ちなみに仕込み水のなかに「氷」が入っていましたが、タンク内の温度を低くするため、今回だけの特例なのだそう。「醪造りの工程で氷を入れている酒蔵さんを見るのは初めて!レアです!」と参加者の方から喜びの声もあがりました。

蒸米の放冷とタンクへの投入を数回繰り返し、体験は終了!最後に参加者の皆さんから感想シェアと質問の時間が設けられました。

仕込みを終えた醪は20〜30日かけて熟成させたあと、酒袋に入れて、「槽(ふね)」と呼ばれる圧搾機を使って搾ります。

今回、用意したお米で「720mlの日本酒が500本(※)」できあがる予定。酒米として一般的な吟醸米ではなく、コシヒカリを使うのは東和酒造さんとしても初めての試みなのだそう。どのような味わいになるのか楽しみですね!

※「720mlの日本酒が180本」と記載していましたが訂正しました。

東和酒造をあとにして市街地に移動。『福知山アークホテル』にある和食レストラン『食房 和楽』でランチタイムです。今日の振り返りやこれまでに訪れた酒蔵など、日本酒談義に華を咲かせました。以下、参加者の方からの感想を抜粋してご紹介します。

実際に日本酒づくりの工程を体験して、よりいっそう、日本酒を大事に飲もうと思いました。

プロの現場で体験させてもらったのはとても貴重。素人が参加できる工程を見極め、提供してくれた東和酒造さんに感謝です。

日本酒になる前の蒸米に触れられるのは、他所ではなかなかできない体験でした。職人の手がかかる日本酒づくりのなかで、私たちが体験できる部分を抽出してくれたことがうれしい。

上六人部活性化協議会が主催の地域イベント『日本酒造り体験』。2021年1月上旬の最終回では、いよいよ【さつき和花】のお披露目となります。

また、第2回目で参加者が作成したアイデアをもとに、グラフィックデザイナーのスワミカコさんがラベルを制作。どのような姿で登場するのか、どのような味わいになるのか。乾杯の瞬間がとても楽しみです!

・第1回目のレポート記事
・第2回目のレポート記事

※最終回は感染症対策のため中止となりました(2021.01.07)