夜空に輝く中秋の名月。そして、明き光に照らされた福知山城。2020年10月1日、福知山市の街並みを見渡せるビルの屋上で、ナイト・トークイベント【Rooftop Salon】が開催されました。
福知山城を舞台に実施されるイルミネーション・イベント『福知山イル未来と 2020 ~明かき光〜』。同時期に開催される全3回の【Rooftop Salon】では、特別ゲストと参加者が交流しながら、まちの未来について語り合います。
第1回目は『福知山イル未来と 2020』の基調講演として開催。同イベントの総合演出を担当する三谷 正さんをゲストに招き、プロジェクションマッピングの舞台裏や地域との関わりについてお話をいただきました。当日のイベント模様をお届けします!
光、音、映像が織りなす特別な世界
映像制作や空間演出などのコンテンツ企画・制作を行う『Pixel Engine LLC.』。その代表/映像・空間ディレクターとして活動している三谷さん。まずはこれまで取り組んできた実績について、動画をもとに紹介してもらいました。
例えば、世界文化遺産登録25周年を記念して開催された『姫路城光の庭 CASTLE OF LIGHT』。1辺が約15メートルの巨大な立方体に、13台のプロジェクターとレーザーサーチライトを使って投影。姫路城を象徴する白鷺が舞い降りました。
また、『舞鶴赤れんがサマーイルミネーション2017』では、倉庫群の壁面に光の回廊を演出。三谷さんが意識したのは、観客が見る主体(対象)を作らないこと。「どこに視点を合わせるべきか分からない状況や空間そのものを楽しんでもらえるように工夫しました」と振り返ります。
三谷さんが手掛けてきたのは、大規模なイベントだけではありません。例えば、京都三条にあるアパレルショップ『Jonbull』では、作家や京都造形大学の学生とコラボレーション。店内の演出に挑戦しました。
店内の壁や商品棚の板などに向けて、プロジェクションマッピングを投影。全体的に映すのではなく、ピンポイント照射などで的を絞る技術などを駆使しながら、ブランドの世界観を表現しました。
感動の空間演出が生まれる理由
第1回目【Rooftop Salon】のサブテーマは、身近な場所のライトアップ企画を考えることでした。私たちもライトアップやプロジェクションマッピングを取り入れることは可能なのでしょうか。
三谷さんからは「誰にでもできますよ」と予想外の回答!特別な機会や高度な技術は使っていないのだそう。実際、『広島マリーナホップ』の事例では、スクリーンに映像を投影するくらいの小さなプロジェクターが使われています。
プロジェクトの規模によって機材の台数が変わってきますが、設備自体は特別なものを使っておらず、誰にでも購入できるとのこと。また、演出の方法もネット上から情報を得られるのだそうです。
「それでは、どこでクオリティの違いが生まれるのか。正直、うちは国内でも最高峰の空間演出ができると自負していますが、それは、機材を使う人間の技術力が高いから。そして、演出を考える姿勢や映像を投影するときのこだわりがあるからだと思っています」
例えば、お客さんを中心に考えたとき、映像を1cmでも近い場所に投影したほうがおもしろい。どんなにすごい映像をつくる技術があったとしても、それが遠い場所に投影されると、効果は薄れてしまします。
また、お客さんの回遊を促すことも大切。映像を映す=お客さんとモニターの1体1の関係を思い浮かべがち。それよりも、光、音楽、映像が作り出す空間を自由に楽しんでもらう工夫が必要だと話します。
大切なのはライトアップやプロジェクションマッピングを形にする前の姿勢。それは、『福知山イル未来と 2020』の演出でも実践されていました。
本来の価値を最大限に活かす
三谷さんは昨年の「ゆらのガーデン」で実施されたイベントに引き続き、『福知山イル未来と 2020』の総合演出を担当。明智光秀が取り組んだ治水対策をはじめ、まちの歴史・文化と現代アートの融合をテーマに大規模な演出が施されています。
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▲全4カ所で実施される演出。全長約130mの「光の川」では数パターンの投影が施され、桔梗紋や福知山市の市章などが浮かびます。
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▲イベントテーマのひとつは「減災」です。明智光秀が市民の敬愛を得ているのは、災害対策によって街を発展させた歴史があるからこそ。今回、イベントの使用電力の半分に、非常時にも使用できるトヨタ・プリウスのPHV由来の電気が使われています。
福知山の夜を楽しんでもらい、コロナ禍で沈んだ地域経済の復活に希望の光を灯したい。そんな『福知山イル未来と 2020』に向けた想いについて、会場に居合わせた実行委員長の足立 聖忠さんは「福知山城から街を盛り上げる気運を高めていきたい」と話します。
「大河ドラマで福知山が注目される流れを活かしたいと、三谷さんと企画を練ってきました。これはいける!と自信を持って提案できるものができたのですが、コロナの影響で計画は頓挫したんです。今年の開催を諦めかけた矢先、京都府さんからナイトツーリズムの打診を受けて開催することができました。明智光秀が取り組んだ防災や歴史をテーマに掲げ、来年以降も福知山が盛り上がるきっかけになればと思っています」(足立)
イベント開催が決定したあと、三谷さんは演出に向けた準備をはじめます。そこで取り組んだのが、とにかく福知山城を見てまわること。外部からの情報を取り込まず、まっさらな状態で、現場の地形や感触を確認します。
「現場をじっくりと見てまわって、福知山城がコンテンツとしておもしろくなる確信を得ました。そこで意識したのは、明智光秀の歴史や情報にまつわる投影をしないこと。素敵なのは間違いないのだから、それ以上のことを説明する必要はない。それよりも、空間が持っている本来の価値をいかに高めるか? 演出するか? を徹底的に考えました」
ライトアップやプロジェクションマッピングの美しさは、SNSや写真などでも伝えられます。でも、福知山城が持っている本来の価値を体験するには、”現場”に立ち、空間や演出を肌で感じるほかありません。
よそ者だからこそ見出せる地域の魅力
イベントの終盤では、来年に向けた展望も話されました。
例えば、福知山城、ゆらのガーデンに続く、夜の福知山を楽しめる常設のイルミネーションポットができないか。また、広小路商店街の理事長・吉田 博さんも「明智光秀が築いた福知山の街が世界に伝えられたら」と期待感を示します。
また、三谷さんは「地元じゃないからこそできることがある」と語ります。
「僕たちのようなよそ者に何ができるのか。それは、フラットな目線で場所や空間の価値を徹底的に掘り起こすことだと思っています。地域の中で自発的に湧き起こる魅力を探して、みんなでディスカッションを繰り返しながらいいものに仕上げていく。そこで鍵となるのは人です。イベントのおもしろさは、地元の人たちの熱意が原動力にあってこそだと確信しています」
最後に三谷さんは『福知山イル未来と 2020』について、「開催したい、盛り上げたいという地元の人たちの熱意があってこそ実現しました。これだけのクオリティを出せるイベントは他にありません」と評価した上で、「ここで僕の話を聞いてる場合じゃないです。今すぐに会場に行ってください(笑)」とメッセージを贈りました。
一度は開催が危ぶまれた『福知山イル未来と 2020』。福知山城の夜に灯る明き光は、福知山をはじめとした、いろんな地域を照らす希望となることでしょう。是非、三谷さんの演出によって引き出された福知山城の魅力を感じてみてください。
一部の写真協力:@photohito_1003
福知山ナイトツーリズム|イベント情報
福知山城のライトアップ以外にもイベントが開催されます。
この機会に福知山の夜を遊びつくしませんか?
福知山イル未来と2020『明かき光』
・日程:2020年10月1日(木)〜11月3日(火)
・時間:18:00〜21:00
・会場:福知山城周辺
・主催:福知山ナイトツーリズム実行委員会
・詳細:Facebook|Instagram
※台風14号の接近・機材調整のため、10月9日〜10月15日は中止となります。再開は10月16日(金)を予定。詳細は公式SNSをご確認ください。
10月17日|Rooftop Salon vol.3
冬の寒い日、ひんやりとした空気に思わず身震い…
夏の暑い日、エアコンを切ったら寝苦しい…
季節に左右されず、快適に過ごせる家に住みたい! そんな気持ちに応える「断熱エコハウス」が注目されています。夏も冬も快適に過ごせる、健康にもお財布にも優しい住宅設計。さらに、地域経済の循環を生み出す可能性にもつながっています。
Rooftop Salonの最終回!今回、エネルギーとまちづくりに精通した、建築家の竹内 昌義さんをゲストにお招きして、これからの地域と暮らしを考えるトークイベントを開催します。
・開催日:2020年10月17日(土)19:00〜21:00
・開催場所:福知山市内のビル屋上&オンライン(Zoom)
・定員:先着20名
・詳細はこちらから
10月17日|福知山ナイトホッピング
スナックの世界を、この機会に体験してみませんか?
10月17日(土)に開催される【福知山ナイトホッピング】は、数軒のスナックを巡る屋外ツアーイベント!各店舗の名物ママと乾杯しながら、「初心者さんでも大丈夫」なスナックのお作法をレクチャーしてもらいます。全国からオンラインでの参加もOK!ひとりでは躊躇してしまうスナックの扉を一緒に開きましょう!
・開催日:2020年10月17日(土)19:00〜21:00
・開催場所:京都府福知山市(御霊神社周辺のスナック)
・集場所:福知山市新町商店街周辺(調整中)
・定員:リアル参加(45名)、オンライン参加(30名)
・イベント詳細はこちらから
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