レポート

私的に自由に街を楽しむ【Rooftop Salon vol.2 with 笹尾 和宏】イベントレポート

2020/11/02

ほんの少しでも視点を変えてみる。
それだけで、私たちが暮らす「街」の景色はがらりと変わります。
例えば、次のような趣向はいかがでしょうか。

ファインダーを象った額縁を作り、
建物の輪郭を書いておきます。
普通に除けば一般的なお家が見えるだけですが…

フィルムにイラストを描けば、素敵なお家のできあがり!こんな建物に住みたいなぁと想像しながら、街の表情を好きなように描いて楽しむ遊びです。

こんなふうに普段の生活に一工夫を入れて、楽しんだり、遊んだりするのが好き。今回の主役・笹尾 和宏(ささお・かずひろ)さんは、イベントの始まりにそう話します。

笹尾さんは、会社員として勤務しながら『水辺のまち再生プロジェクト』や『NPO法人とんがるちから研究所研究員』に所属。課外活動として地域や街に関わっており、水辺、路上、公園など、公共空間の活用を実践・提案しています。

福知山城を舞台とした『福知山イル未来と 2020』と同時期に実施されるナイト・トークイベント【Rooftop Salon(ルーフトップ・サロン)】。笹尾さんには、2020年10月10日に開催された第2回目のゲストとして登壇していただきました。

街中にある余白(パブリックスペース)を活用する。また、ひとりの“生活者”の視点で地域や街と関わってみる。そんなテーマで考えを深められたイベントの模様をお届けします。

公共空間はディナーの会場になる

都市を活かして自由に遊ぶ「アーバンアウトドア」、大阪市内の河岸空間を活かした『水辺のまち再生プロジェクト』、とんち”の効いた地域活性・課題解決を目指す『特定非営利活動法人とんがるちから研究所』など、幅広く取り組んでいる笹尾さん。

著書『PUBLIC HACK 私的に自由にまちを使う』では、誰かによってつくられた賑わいを享受するのではなく、自分でまちの魅力を見出して楽しむ方法が書かれています。
PUBLIC HACK

イベントの冒頭で、笹尾さんは「次に紹介する9つの行為を“どこでするか?”を考えてみてください」と問いかけます。スライドには、「ディナーを楽しむ」「お酒を嗜む」「映画を鑑賞する」「手漕ぎボートに乗る」といったテーマが映されました。

ぱっとみて考えてみると、飲食店や施設、映画館、自宅などを思い浮かべます。でも、「実は街中のいろんな場所を使ってできるんですよ」と笹尾さん。これまで実際に取り組んできた「街の楽しみ方」を教えてくれました。

例えば、夜景が見える橋の上でBARを開いたり、プロジェクターとスクリーンを持って公園で仲間と映画を観たり、ビルに見下ろされながらゴムボートで水上を散歩したり。街中の公共的な場所を活用した、自由な楽しみ方を実践しています。

笹尾さんが所属する市民グループ『水辺のまち再生プロジェクト』では、水都・大阪の川沿いを活かした楽しみ方を実践。例えば、『水辺ダイナー』ビルの夜景が綺麗な路上や大阪城が見える橋の上など、水辺周辺の空間を活用してディナーを楽しみます。

物を固定するための道具「クランプ」を2本使う『クラインピング』。柵や手すりなどに固定し、板を渡せばカウンターテーブルの出来上がり。PC作業をしたり、BARカウンターにしてみたり。2019年には『クランピングウィーク』も開催されました。

歩道や広場、河川、公園といった「公共空間」を使うとき、2種類の使用方法に分けられます。ひとつはイベントの開催やコミュニティ形成など、比較的大規模で許可が必要になる“公明正大的”な使い方。そして、先ほど紹介したような、個人が自由に、街中の好きな場所を使って遊ぶ“ゲリラ的”な使い方です。

行政用語で“公明正大的”な使い方=許可が必要な「特別使用」、“ゲリラ的”な使い方=許可が不要な「自由使用」と表記。例えば、公園でフェスティバルを開催するとき、本来の公園の使用方法とは違うので特別使用となります。

笹尾さんは日常生活において、公共空間を主体的に自由に使う「自由使用」を広める活動をしています。公園にテーブルをおいて食事を囲んだり、街のど真ん中にボートを浮かべたり。先ほど消化した取り組みもその一環です。

公共的な場所を使う側の視点で見てみると、余白はあちこちにある。その上で「私的に自由にもっと街を楽しましょう!」と笹尾さんは提案します。

私的に自由に街を活用する

でも、本当にこんなことして大丈夫?

参加者からは「さすがに街中の川にボートを浮かべるのは……」との意見もありました。でも、「基本的にはOKなんですよ」と笹尾さん。私的に自由に街を楽しむためのメソッドを教えていただきました。

これはNG!な3つの行為

「日本には河川法、道路交通法、都市公園法などが定められています。それぞれに禁止事項が明確に書かれており、それらに該当しないことであれば基本的に問題ありません。でも、NG行為やマナーに反する行為(以下の画像参照)には注意が必要です」(笹尾)

まずは気持ちのいい場所を見つける

「通勤途中の道や近所の公園など、日常の空間から心地よいと感じる場所を見つけるのがファーストステップ。そこで「どのように過ごせるかな?」と考えてみましょう。大事なのは”お気に入りの場所”を見つけて、“無理せずに楽しむこと”です」(笹尾)

行動パターンを変えてみる

「僕が取り組んできたことは、どちらかといえばハードルの高いので。まずは気軽にできることから試してみましょう。コンビニでお弁当を買ったあと、会社に戻らずに座れる場所を探して、青空の下で食べてみる。それだけでも見える景色が変わります。自分の好きなことを外に持ち出してみるような、そんな軽いノリからはじめてみてください」(笹尾)

公園や路上、橋の上など、公共的な場所について「みんなの場所」と表現されることが多々あります。そこで「勝手に使ったらダメなのかな」と萎縮しがちですが、笹尾さんは「みんなには”私”も含まれるんです」と言います。

「僕たちは必要以上に“やったらダメっぽい”と萎縮してしまっている気がします。先ほども説明しましたが、他人の自由を奪ったり、迷惑をかけたりしなければ自由に使っていいんです。公共空間は、あなたも含めたみんなの場所ですから」

街の主役はあくまでもあなた

私的に自由に街を楽しむ。身近な公共空間をもっとおもしろく活用する。その積み重ねの先にどのような効果を期待できるのでしょうか。笹尾さんは3つのメリットがあると期待しています。

公共空間をもっと自由に使えば、街での過ごし方にバラエティが生まれ、一人ひとりの生活が生き生きとしてくるでしょう。そして、一人ひとりの行為が徐々に周辺に浸透していき、街の景色を形作っていきます。

例えば、大阪市の『中之島公園』や京都市内の『鴨川』には、幅広い人たちが自由に過ごしている。それを許容している。そんな風景や雰囲気を地域につくることが大切ではないかと笹尾さんは考えます。

「やることがなくなっても、ずっとそこに居続けられる。特に用事はないけれど、ふらっと立ち寄ったり、遊びに行けたりする。中之島公園や鴨川のように、自由に人々が過ごせる公共空間がある街はすごく豊かだなと思うんですよね」

また、”公明正大的”な取り組みは1度に大きな効果を生み出しますが、実現するまでのハードルが高い。一方で、”ゲリラ的”な取り組みは場所や時間を選びません。最初は小さな行為であっても、大きな行為につながることもあります。

例えば、2020年9月から月1回開催している『水辺のレストラン』。河川敷のオープンエアな場所を使って、フレンチのフルコースを味わえるイベントです。笹尾さんの仲間の1人が企画・運営の協力をされていて、『水辺ダイナー』での実体験を参考にしているのだそう。“ゲリラ的”な取り組みが、“公明正大的”な取り組みに役立った実例です。

最後に、笹尾さんは「街や地域の主役はあくまでも“あなた”」とメッセージを贈ります。

「街や地域を構成しているのは建物や空間だけではありません。そこで過ごしている私たち自身も街を形作っています。黒子やエキストラになるのではなく、あくまでも主役として自由に街を楽しむ。そんな人が増えれば、もっと素敵な風景が育まれていくと思うんです」

屋外の“余白”を活用する

お店や施設などの屋内で過ごすのが難しい昨今。今後もこの状況は続くことが予想されます。そのなかで、笹尾さんの「街中にあるパブリックスペースを活用しよう!」という考え方は、いろんな可能性を秘めていると感じました。

例えば、『Rooftop Salon』は、広小路商店街にある『古本と珈琲 モジカ』の屋上を活かしたトークイベント。今回はあいにくの天気で屋内開催となりましたが、ビルの屋上という街中のパブリックスペースを活用した事例といえます。

また、10月17日に開催されたのが、福知山市のスナックを巡るイベント『福知山バーホッピング』が開催。街中の路上にオリジナル屋台を置いて、スナックのママと乾杯しました。

福知山バーホッピングの様子。当日の模様は後日お届けします!

さらに、今回はひとりの“生活者”の視点で、地域や街との関わりを捉え直す時間にもなりました。自宅までの帰り道、休日の散歩道。身近な場所を改めて見直してみると、いつもとは違った景色が見えてきます。そのなかで、街を形作り主役として何ができるのか、どう楽しめそうなのか。一人ひとりがそう考えるだけでも、地域の明るい未来はきっと拓けていくはずです。